定期レポート7月号

ブロックチェーン経済研究ラボの定期レポート7月号を発行しました。今回は特別に、7月号より「今月のまとめ」をご紹介します。

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今月のまとめ

ビットコインの「分裂」が話題となっている。これは、関係者の間でビットコインの改善へ向けたソフトウェアのバージョンアップに関する合意形成が達成できなかった際に、二つのバージョンのブロックチェーン(あるいはコイン)に分裂してしまう可能性があるという問題である。今号では慶應義塾大学上席所員の斉藤賢爾氏からこの分裂騒動についてコラムを寄せていただいているので、ぜひお読みいただきたい。

さて、今号でもブロックチェーンの活用には様々な動きが見られたが、ここ最近で最も話題になっているのはICO(Initial Coin Offeringである。トークンを発行することにより手軽に世界中から資金調達を行えるということで、世界的に新たな資金調達手法として定着しつつある。こうしたICOについては、国会でもその是非について議論が行われた。一方、米国では入国時の保有ビットコインの申告義務化について議論が行われており、欧州ではGDPR(個人情報保護の枠組み)との関係で議論が進んでいる。前者はナショナルセキュリティの観点、後者は個人情報保護との関係であるが、他の領域の制度との整合性が議論になっているとも言えるだろう。

プラットフォームの面では、ビットコインの分裂騒動が最も注目を集めつつあるが、それ以外にはシスコのようなネットワークインフラを手がける企業への影響という話題もあった。ブロックチェーンは台帳を重複して持ち、合意形成を行うため通信インフラには多大な負担がかかる技術である。今後インフラレイヤーに関する議論も進んでいくかもしれない。

一般分野、金融分野にまたがる話題としては、ICOの案件が多く見られた。インキュベーションファームのCofound.it、分散ジャーナリズムのVERITAS、クラウドソーシングのChronobankなどである。トークンを用いることで、一般サービスと金融が融合していると見ることもできるだろう。一般ユースケースとして見ると、VERITASはジャーナリズムの世界にブロックチェーンの分散性を導入するもので興味深い。また、難民へのID構築も注目される。

金融分野では、ロシア、インド等での中央銀行デジタル通貨としての活用の推進が注目される。これまでの英国、カナダ、スウェーデン等で自国通貨のデジタル化が議論されてきたが、今後の実用化に向けた動きが注目される。また、日本発のサービスとして開始されたVALUも注目される。これは個人の株式類似のトークンを発行し、第三者が売買するもので、高い注目を集めている。個人がICOを行うようなスキームであり、今後の利用状況が注目される。ブロックチェーンがもたらす「信頼の脱組織化」による経済のミクロ化が、様々な場面で出てきている一例であるともみることができるだろう。

なお、7月27日には本レポート購読者向けの限定セミナーを開催予定である。地域通貨や電力、シェアリング・エコノミーへの活用をテーマに議論を行う。関心のある方は是非ご参加いただきたい(詳細は巻末参照)。

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購読にご関心のある方は、こちらよりご連絡ください。

地域におけるブロックチェーン

昨日、プレミアムセミナー「地域におけるブロックチェーン」を開催いたしました。

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会津大学の藤井靖史先生、ガイアックスの峯荒夢様を講師にお招きして、地域におけるブロックチェーンをテーマに議論を行いました。地域通貨から電力、シェアリングまで、ブロックチェーン活用のコンセプトから実践状況まで共有した上で、ブロックチェーンを活用することの意義について議論を行いました。

確実に価値を記録することで、様々な取引や交流を活発化させることができるのではないか、とくブロックチェーンの意味合いについて洞察が深まった会となりました。

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。

 

※「プレミアムセミナー」はブロックチェーン経済研究ラボ定期レポート購読者様を主な対象としたセミナーとなっております。ご関心のある方は、レポート購読をご検討下さい。

プレミアム・セミナー開催のお知らせ

GLOCOMブロックチェーン経済研究ラボのプレミアムセミナーを開催します。

テーマは、「地域におけるブロックチェーン活用」です。

  • 日時: 2017年7月27日(木)16:00~18:00
  • 場所:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
  • 講師:藤井靖史(会津大学)、峯荒夢(株式会社ガイアックス)

 

概要

ブロックチェーンの活用は仮想通貨から所有権、著作権、電力、公共分野まで幅広い分野へと広がりつつある。こうしたユースケースにはどのような特徴があり、またブロックチェーンを活用するメリットはどのようなものがあるのだろうか。本セミナーでは、ブロックチェーンを活用した地域通貨である『萌貨』や、電力への応用など、様々な取り組みを進める会津若松市の取り組みと、株式会社ガイアックスが進めるシェアリング・エコノミーへの応用を取り上げ、地域におけるブロックチェーン活用の可能性とその課題を探る。

※本セミナーは、「ブロックチェーン経済研究ラボ 定期レポート」の購読企業を中心とした招待制となっております。

 

登壇者プロフィール

藤井靖史

会津大学准教授/CODE for AIZU Founder/Code for Japan理事/内閣官房情報通信技術総合戦略室 オープンデータ伝道師。ブロックチェーンの地域実装など、地域課題を種にした価値創造に取り組んでいる。

峯荒夢

株式会社ガイアックス R&D本部 技術開発部 開発マネージャー。新規技術開発を担当し、その中でもブロックチェーンは、シェアリングエコノミーを支える最も重要な技術として取り組んでいる。中間者による搾取が排除され、フェアで不正の無い世の中を実現する技術としてその可能性を信じ、社会への実装へ向け日々取り組んでいる。ブロックチェーンの国際標準化を検討するTC307/ISO国内検討委員にも名を連ねている。

 

申し込み方法

  • 本セミナーは、招待制です。対象の方は以下の通りです。
    • ブロックチェーン経済研究ラボ 定期レポート購読企業
    • ブロックチェーン経済研究ラボ 研究サロンメンバー
    • その他ご招待させて頂いた方々
  • ご参加申し込みは、所属・お名前をberl[at]glocom.ac.jpまでお送りください。← [at]を@に置き換えて送信してください。

 

地域活性化とブロックチェーン

昨年、会津若松市で行われたデジタル通貨「萌貨」の概要と結果が公開されました。

英語ですが、どうぞご覧ください。

Blockchain-Based Digital Currencies for Community Building

要旨

ブロックチェーン技術は、近年、組織や経済全体に対して幅広く影響を与える技術として注目を集めている。ブロックチェーン技術、あるいは分散型台帳技術(DLT)は、世界に分散する不特定多数の参加者により発行・維持されるビットコインや類似のデジタル通貨を実現するためのプラットフォーム技術として誕生した。ビットコインなど、民間分野におけるデジタル通貨が普及するにつれ、同様のデジタル通貨を、幅広い様々な文脈において活用することへの関心が高まっている。例えば、英国、スウェーデン、カンボジア、カナダなどの中央銀行においては、それぞれ独自のデジタル通貨を検討しているとされている。また、自動車や太陽光パネルなどを含め、IoTにおける決済へのデジタル通貨の試みもみられる。いくつかのスタートアップ企業では、資金調達手段としてデジタル通貨を活用している。多様な文脈と目的に対してデジタル通貨を発行することは、経済の機能に影響を与えることが考えられる。本稿では、地域活性化のためのデジタル通貨に関する概念的枠組みと技術実装について解説し、新規のマネーである「萌貨」の実証実験の結果を報告する。

Abstract

Blockchain has recently become the center of attention as a key technological tool to impact a broad range of organizations and affect the overall economy. Blockchain technology, also referred to as Distributed Ledger Technology (DLT), was initially created as the platform technology that enables Bitcoin that are issued and maintained by anonymous participants around the world. Reacting to the wider acceptance of digital currencies in the private sector, such as Bitcoin, there is a growing interest in the wider use of similar digital currencies in a different context. For example, central banks in countries such as the United Kingdom, Sweden, Cambodia, and Canada are reported to be considering their own digital currencies. There is also a trial to use digital currencies to enable payments for the Internet-of-Things, such as automobiles and solar cells. Some start-up companies use digital currencies to collect investments. Issuance of digital currencies for a variety of contexts and purposes could change how the economy works. This paper provides a conceptual framework and technological implementation of a digital currency for community vitalization and reports the results of a Proof-of-Concept using a new local currency, “Moeka.”

中央銀行デジタル通貨

中央銀行(従来の国のお金を発行していた銀行)が、ブロックチェーン技術を使ってビットコインと類似するような通貨を発行するというアイデアがあり、複数の国で詳細に検討されています。

中央銀行がデジタル通貨を発行したらどのような課題があるのでしょうか。中央銀行デジタル通貨(CBDC)にまつわる論点を網羅的に整理したディスカッション・ペーパーが刊行されました。ご関心のある方はどうぞご覧ください。

Soichiro Takagi (2017) “The Impact of Central Bank Digital Currency: From a Functional Perspective”, GLOCOM Discussion Paper Series 17-003. http://www.glocom.ac.jp/wp-content/uploads/2017/05/GLOCOMDISCUSSIONPAPER_No5_2017-No003e.pdf
(要旨の日本語訳)

ブロックチェーン技術は、幅広い経済やビジネスの仕組みに変化をもたらす技術的革新として注目を集めている。分散型台帳としても知られるブロックチェーン技術は、当初ビットコインを実現する基盤技術として誕生した。こうしたビットコインや類似のデジタル通貨は、世界中の不特定多数の参加者により発行され、維持されている。しかし、ビットコインのような民間セクターのデジタル通貨への対応として、各国の中央銀行も、自らのデジタル通貨を発行することについて関心を高めている。英国、スウェーデン、カナダ、カンボジアなどの中央銀行が、中央銀行自ら発行するデジタル通貨について研究を行っている。もし中央銀行がブロックチェーン技術に基づき、自らのデジタル通貨を発行することになれば、国内外の経済や、金融システムに対して幅広い影響を及ぼすことが考えられる。本稿は、ブロックチェーン技術の技術的・機能的特徴を紹介し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実装に関わる経済的・社会的な影響可能性を示すことにより、中央銀行デジタル通貨について議論する際の論点やポイントを包括的に示すことを目的とするものである。

Consensus2017に登壇しました

2017年5月にニューヨークで開催されたブロックチェーンに関する最大級のカンファレンス「Consensus 2017」のRoundtableに、当ラボ代表の高木が登壇しました。

Consensus Conference Sessions
Roundtable

Hyperledger will host a roundtable on Monday, May 22 at 10:30 – 11:30 a.m., “Get to Know Hyperledger’s Distributed Ledger Technologies & Use Cases.” Participants will discuss the projects’ technological advantages, differences and best use cases. Join us in the Duffy/Columbia room on the 7th-floor.

高木からは、会津若松市で行った実証実験の結果を踏まえた経済取引のミクロ化や、デジタル通貨とソーシャルキャピタルの関係などについて話題提供を行いました。

World’s Trend of the Innovation on Blockchain~ブロックチェーン・イノベーションの最新トレンド

※本イベントは満席となりました。

(詳細)
http://www.glocom.ac.jp/events/2323

ブロックチェーン技術を巡っては、世界各地で急速な開発が行われている。中でも、プラットフォーム技術の開発や、様々な領域におけるPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)が盛んにおこなわれている。本国際セミナーでは、米国と英国からブロックチェーン関連のイノベーションに精通する識者を招き、世界の最前線で行われているイノベーションを概観し、その国際比較を試みる。特に、どのような分野やテーマにおいてイノベーションが進んでいるか、また技術開発やスタートアップ企業を取り巻くエコシステムの状況、人材の育成や確保などのテーマで、米国、英国、日本の状況を比較しつつ、議論を深める。

日時 / Time and Dates

2017年3月28日(火) 16:00~18:00(15:30受付開始)
March 28th, 2017, 16:00~18:00

会場 / Venue

GLOCOMホール(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター/東京)
GLOCOM Hall, Center for Global Communications (GLOCOM), International University of Japan (Tokyo, Roppongi)

定員 / Number of Attendees

50名(先着順) / 50

参加費 / Fee

無料 / Free

主催

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
GLOCOMブロックチェーン経済研究ラボ

プログラム / Program

※基本的に英語での開催ですが、日本語による簡単な解説が付きます。

講演 / Lecture

カテリーナ・リンディ Caterina Rindi
(Blockchain Consultant and Educator / Director, Corporate Social Responsibility and Impact)

キャサリン・マリガン Catherine Mulligan
(Co-Director of the Imperial College Centre for Cryptocurrency Research and Engineering)

パネルディスカッション / Panel Discussion

モデレーター / Moderator
高木聡一郎 Soichiro Takagi
(国際大学GLOCOM主幹研究員/准教授/研究部長)
質疑応答 / Discussion and Question-and-Answer from the audience